お施主さんが庭に求める理想の世界を形にしようとして、あるいは時代の求める美意識に応えようとして、さまざまな様式美が生み出されてきました。それが自然の成りゆきだともいえましょう。もちろん、長い歳月を積み重ねてはじめて、新しい評価が与えられる庭もあります。そういうなかで私たちは、永遠のものも時々の新風も根元は一つであるという「不易流行」の精神を大切にしながら、どうすれば「植芳らしさ」を表現できるかと智恵をしぼり、新たな様式の創造をつづけています。現代に生きるお客さまの理想を、旧来の素材や手法、様式に囚われることなく、土の上に表現することが私たちの仕事だからです。
私たちが追求する「植芳らしさ」の根本は「構成美」。一本の樹木、一つの石が、その場で長い時間を重ねてきたかのごとく自然な姿で収まっている、それが「モノの美」に頼らない「構成美」の本質。あたりまえの風景をあたりまえに表現する──私たちが追求するそういう「植芳らしさ」は、「京都らしさ」にも通じます。そこには、その土地の自然や風土が醸し出す「美の世界」があると確信しています。